はじめに
こんにちは。次世代デジタル基盤開発事業部の鈴木康男です。エンジニア・PMとして、Web3.0に関わるプロジェクトを担当しております。
「【月刊】Web3.0トピック振り返り」では、毎月Web3.0関連で気になったトピックを取り上げて紹介していきます。
1. アジア最大規模のグローバルカンファレンス「WebX2024」が東京で開催される
2024年8月28, 29日にWeb3.0に関してアジア最大規模のカンファレンスである「WebX2024」が東京で開催されました。 私はこのカンファレンスの一日目に参加をし、Web3.0業界の最新動向や将来の展望を探る貴重な機会を得られました。
今年のカンファレンスで最も印象的だったのは、大手企業の存在感の増大です。 SBIグループやNTT Digitalなどが大規模なブース展開、セッション登壇を行っていました。 Web3.0技術の社会実装、すなわち一部の技術好きだけでなく一般ユーザーまでプロダクトを届けるという段階が現実味を帯びてきたことが実感できました。
もちろん大手企業に限らず国内外のスタートアップが野心的なプロダクトを作り業界の可能性を広げていることも、ブースやセッションから感じ取れました。 競争が激しくなる一方で、大手企業とのパートナーシップによってイノベーションが促進される可能性も大いにあると感じました。
2. ソニーの新たな挑戦:Sony Block Solutions Labsがブロックチェーン「Soneium」の開発を発表
ソニーグループのSony Block Solutions Labsは、Ethereumのレイヤー2ブロックチェーン「Soneium(ソニューム)」の開発を発表し、Web3.0技術の普及と大衆化を目指すという計画を明らかにしました。
Soneiumの目標は、従来のインターネットサービス(Web2.0)とブロックチェーン技術(Web3.0)を接続し、ユーザーにとってより使いやすいプラットフォームを提供することです。 ソニーの多岐にわたる業界リーチを活かし、エンターテインメント、ゲーム、金融分野での革新的なアプリケーション開発を促進することが期待されています。
Astar Networkとの協業によって実現されており、既にローンチしているチェーンであるAstar zkEVMのSoneium L2への移行計画が発表され、既存のAstarエコシステムとの相乗効果が期待されています。
ソニーのブランド力と信頼性は、暗号資産やWeb3.0へ新規のユーザーや、これまで参入に躊躇していた企業の参入を促進する大きな可能性を秘めています。
既存の暗号資産、Web3.0のユーザーを惹きつけるには、ブロックチェーンおよびアプリケーション含めたエコシステムとしての継続的な価値創造と差別化が重要となると個人的には考えます。 また、日本市場に特化せず、グローバルな視点でのサービス展開が重要です。 大手企業発のブロックチェーンとしては米大手暗号資産取引所のCoinbaseがローンチしたレイヤー2ブロックチェーンである「Base」のエコシステムやマーケティング手法が、グローバルな視点での展開の成功例と言えるでしょう。
3. イーサリアムL2「Optimism」、セキュリティ機能の脆弱性に迅速対応
Optimismは、Ethereumのレイヤー2スケーリングソリューションとして知られるブロックチェーンです。ブロックチェーンの管理や意思決定がDAOとして運営されていることも特徴です。 今回、重要なセキュリティ機能である「フォルトプルーフ」に脆弱性が発見され、その修正計画が発表されました。
Optimismの開発チームは、コミュニティ主導の監査で発見された脆弱性に対処するため、フォルトプルーフ機能を一時的に無効化し、代わりに許可制のセキュリティ機能「フォールバック」を有効化する計画を立てました。この対応は約3週間のアップグレード期間中に行われ、その間はオプティミズム財団がセキュリティを管理し、必要に応じてセキュリティ評議会が介入する権利を持ちます。
この迅速な対応は、ブロックチェーンプロジェクトにおけるセキュリティの重要性を示しています。 また、この事例はDAOとしての分散性を持つOptimismが、緊急時には迅速に意思決定できる体制を整えていることを示しており、DAOの事例として興味深いと感じました。 DAOの中で財団、評議会のようなリーダーシップをとれる存在があることで、迅速な対応を可能にしたと言えます。
4. DMMが独自ステーブルコイン発行の共同検討を開始
DMM.comとその子会社DMM Crypto、そしてProgmat(プログマ)社が、改正資金決済法に準拠した新たなステーブルコインの発行に向けた共同検討を開始しました。このステーブルコインは、2024年度内の発行を目標に、すでにテストネット上で発行・検証が始まっています。注目すべきは、このステーブルコインがDMM Cryptoの独自トークン「SMP」の価格安定化を目的としている点です。
この取り組みでは、独自トークンSMPの裏付けの資産として、価格の安定したステーブルコインを用いることになります。 暗号資産の柔軟な発行と流通を可能にしつつ、価値の安定性を確保するアプローチとして目新しいと感じました。
今回の取り組みは、ステーブルコインに関する規制環境の整備や、既存の金融機関を巻き込んだ形での体制構築が実を結びつつある結果だと感じました。 今後、ステーブルコインの国内でのユースケースが続々と増えていく可能性を感じます。
5. Mycelが提案する革新的な「Transferable Account」
8月に公開されたMedium記事で話題となったMycel(マイセル)の新技術について紹介します。 Web3.0についてはここ数カ月でビジネス面でのニュースは多いものの、新たなブレイクスルーを起こし得る技術面でのニュースが希少なため、取り上げさせていただきます。 Mycelは、複数のブロックチェーンを横断して使用できるドメインの作成や、高い相互運用性を持つネームサービスの提供を目指すプラットフォームです。日本人チームを中心に開発が進められているこのプロジェクトは、ブロックチェーン技術の普及と利便性向上に貢献することを目標としています。
Mycelが提案する「Transferable Account(TA)」は、この目標を実現するための技術です。TAは、ユーザー自身のアカウントとMycelによる特殊な署名を組み合わせた新しいタイプのアカウントです。
現在のブロックチェーン環境では、レイヤー2ソリューションや様々な独立したブロックチェーンの登場により、ユーザーは各プラットフォームごとに別々のアカウントを維持する必要があります。この状況は、資産管理を複雑化させ、新規ユーザーのオンボーディングを困難にしています。
MycelのTAは、この問題に対し以下の機能により解決策を提供します。
- アカウントの所有権を他のユーザーに簡単に譲渡できる
- アカウントに関連付けられた資産も一緒に転送される
- 異なるブロックチェーン間でのアカウントの転送、管理、取引が可能
TAは従来の送金方法に代わる新しい選択肢となり、ブロックチェーン技術の普及を加速させる可能性を秘めています。 例えば、あるブロックチェーンAのウォレットアドレスを持たないユーザーにも、MycelのTAを介してであれば、ブロックチェーンA上のトークンを送金できることになります。 資金の入ったアカウントそのものを受け渡しするという発想は、ブロックチェーンにおける資産移転の概念を根本から変える可能性があると感じます。
今回取り上げたトピックは以上です! 次回もぜひご一読ください。
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