【月刊】Web3.0トピック振り返り~2025年1月編~

はじめに

こんにちは。次世代デジタル基盤開発事業部の鈴木康男です。エンジニア・PM・マネージャーとして、Web3.0に関わるプロジェクトを担当しております。

2025年1月のWeb3.0業界は、大手企業の本格参入から政治との関係性まで、非常に興味深い展開を見せました。今回は、特に注目すべき5つのトピックについて、技術的な観点とビジネス的な観点から分析してみたいと思います。

1. ソニー、Web3.0プラットフォーム「Soneium」でブロックチェーン市場に本格参入

サマリー

2025年1月14日、ソニーグループの新会社Sony Block Solutions Labs(Sony BSL)が、イーサリアムレイヤー2プラットフォーム「Soneium(ソニューム)」のメインネットローンチを発表しました。Sony BSLは、ソニーグループとブロックチェーン開発企業Startale Groupの合弁会社として設立され、2024年8月の構想発表以来、世界中から注目を集めてきました。

Soneiumは、高いスケーラビリティを実現するためにOptimismの技術フレームワーク「OP Stack」を採用し、Superchainエコシステムの一部として構築されています。テストネット段階で既に1400万を超えるアクティブウォレットと4700万件のトランザクションを記録しており、プラットフォームとしての高い潜在力を示しています。

SNFT(ソニーグループのブロックチェーン関連企業)によるNFTファンマーケティングプラットフォームと暗号資産取引サービス「S.BOX」の2つの主要サービスが展開されており、インキュベーションプログラム「Soneium Spark」には1785件もの応募が集まるなど、エコシステムの形成が急速に進んでいます。

オピニオン

ソニーによるブロックチェーン市場への本格参入は、日本のWeb3.0業界にとって極めて重要な転換点になると考えています。特に、エンターテインメント分野での豊富な実績を持つソニーが、Web3.0技術を活用した新しいユーザー体験を提供することで、一般ユーザーのブロックチェーン技術への理解と受容が進むことが期待されます。

今後は、グループ内の多様なエンターテインメント資産とSoneiumの統合が進むことで、Web3.0時代における新しいエンターテインメントの形が見えてくるのではないでしょうか。特に、AI時代における権利管理やコンテンツ流通の新しいモデルとして、業界に大きな影響を与えることが期待されます。

www.coindeskjapan.com

2. 政治とWeb3.0の融合:トランプ大統領のミームコインがSolanaの最高価格を牽引

サマリー

2025年1月、Solanaが歴史的な新高値を記録しました。この急騰の主な要因は、トランプ次期大統領が自身の公式ミームコイン「TRUMP」をSolanaプラットフォーム上でローンチしたことです。Solanaの価格は268.75ドルの最高価格を達成し、時価総額は1,250億ドル(暗号資産時価総額ランキング5位)に到達しました。

TRUMPトークンは初日に2億トークンを供給し、3年かけて最終供給量10億トークンを目指す計画です。トークン配分は、クリエイターとCIC Digitalに80%(3年間のロックアップ)、一般配布に10%となっています。ローンチ後、トークン価格は約27.84ドルまで上昇し、完全希薄化後の価値は280億ドルに達しています。

この動きはSolanaエコシステム全体に波及し、ミームコインローンチパッドのMoonshotはApp Store米国トップ10入りを果たし、12時間で4億ドルの取引量を記録。また、JupiterやRaydiumなどの主要DEXトークンも20-33%の上昇を見せています。

オピニオン

政治家によるミームコイン発行という前例のない出来事について、技術と社会の両面から考察してみたいと思います。

まず、技術的な観点からは、Solanaのスケーラビリティと処理性能が実証されたと感じています。12時間で4億ドルという大規模な取引量を安定して処理できたことは、プラットフォームとしての信頼性を大きく高めたと考えられます。

社会的な観点では、この動きが暗号資産の認知度向上に与える影響が非常に興味深いと考えています。特に日本の文脈で考えると、規制環境の厳しさや国民からの信頼維持の観点から、政治家がこのような形でブロックチェーン技術に関与することは考えにくい状況です。この違いは、各国における暗号資産の社会的受容度の違いを明確に示していると感じます。

ビジネス面では、このイベントを契機としたSolanaエコシステムの成長が注目されます。特に、DEXやローンチパッドなどのインフラプロジェクトが大きな恩恵を受けており、エコシステムの成熟度が証明されたと考えています。

www.theblock.co

3. Vitalik Buterin、「d/acc」の現状と技術開発の責任について言及

サマリー

イーサリアムの共同創設者であるVitalik Buterinが、1月5日に「d/acc(防御的で分散された技術開発加速)」に関する新しいブログを投稿し、その現状と技術革新における責任について論じました。d/accは、シリコンバレーで主流の「e/acc」(効率重視の技術加速)とは異なり、分散システム、リスク管理、持続可能性、人間のためのAI開発を重視する考え方です。

オピニオン

Web3.0とAIの融合が進む中、Vitalikの提唱するd/accの考え方は非常に重要な示唆を含んでいると考えています。特に、AIエージェントが暗号資産取引やDeFi、資産運用に関与する場面が増える中、その責任の所在や緊急停止の仕組みについて議論することは急務だと感じています。

ブロックチェーン技術は、AIの行動と責任を透明に記録・追跡できる可能性を秘めています。この特性を活かすことで、AI時代における新しい責任モデルを構築できるのではないでしょうか。

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4. PayPay、ビットコインへの疑似投資機能を追加:疑似投資体験で暗号資産への理解を促進

サマリー

PayPayアプリに「ビットコインコース」が追加され、ユーザーはPayPayポイントを使用して、口座開設不要で疑似的な投資体験ができるようになりました。大手事業者として初めて、ポイントの自動追加機能を実装し、プロモーション期間中はPayPayポイントが賞品として提供されます。

具体的な機能としては、実際のビットコイン価格の変動に連動したシミュレーション取引、自動積立機能、価格アラート設定などが実装されています。また、暗号資産投資の基礎知識を学べる教育コンテンツも提供され、ユーザーは段階的に理解を深めることができます。特筆すべきは、1ポイントから始められる少額での体験が可能な点で、若年層や投資初心者にとって敷居の低い入り口となっています。

オピニオン

PayPayのような大手決済プラットフォームが暗号資産の疑似体験を提供することは、一般ユーザーの暗号資産に対する理解を深める重要な一歩だと考えています。特に、Mercariやその他の信頼できる企業がブロックチェーン技術の社会実装を推進することで、暗号資産に対するネガティブなイメージの払拭につながると期待しています。

この取り組みの重要性は、以下の2つの観点から評価できます。第一に、6,000万人以上のユーザー基盤を持つPayPayが暗号資産分野に参入することで、一般消費者の暗号資産への接点が大幅に増加します。第二に、ポイントを使用した疑似体験という形式により、金銭的リスクなく投資学習ができる環境が整います。

今後は、この取り組みを通じて得られるユーザーの行動データや反応が、日本における暗号資産サービスの発展に重要な示唆を与えることが期待されます。特に、若年層のユーザーがどのように暗号資産に関心を持ち、理解を深めていくかという点は、業界全体にとって貴重な知見となるでしょう。

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5. Aave、Aptosテストネットに展開:非EVMチェーンへの挑戦

サマリー

大手レンディングプロトコルAaveが、非EVMチェーンのAptosテストネットに展開を開始しました。Move言語でのコードベース書き換えやChainlinkとの価格フィード連携など、技術面での新しい取り組みが注目されています。

このテストネット展開では、Aave V3の主要機能である分離プール、効率的なリスク管理、クロスチェーン機能などが実装されています。特筆すべきは、Move言語の特徴である「リソース指向プログラミング」を活用した新しいスマートコントラクト設計が採用されている点です。これにより、従来のEVM環境では実現が難しかった、より安全で効率的な資産管理が可能になると期待されています。

オピニオン

AaveのAptos展開は、ユーザー体験を大きく向上させる可能性を秘めています。これまでユーザーは、異なるブロックチェーン間での資産移動や取引に際して、複雑な手順や高額な手数料に悩まされてきました。しかし、この展開により、ユーザーはブロックチェーンの種類を意識することなく、シームレスに資産の運用や取引を行えるようになります。

例えば、イーサリアム上の資産を担保にしてAptosチェーン上でローンを組んだり、異なるチェーン間で資産を移動させたりといった操作が、あたかも単一のプラットフォーム上での取引のように簡単に行えるようになると予想できます。

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まとめ:Web3.0技術の社会実装が加速する2025年

1月の5つの重要なニュースは、Web3.0技術の社会実装が様々な形で加速していることを示しています。大手企業の参入、政治との関わり、AIとの融合、一般ユーザー向けサービスの拡充、そして技術的な革新が同時に進行しており、業界全体が新しいフェーズに入ったことを実感させられます。

特に注目すべきは、これらの動きが単なる技術的な進歩だけでなく、社会的な受容と実装を強く意識したものになっていることです。今後も、技術の発展と社会実装の両面から、Web3.0業界の動向を注視していきたいと思います。

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