はじめに
こんにちは。次世代デジタル基盤開発事業部の鈴木康男です。普段はエンジニア・PM・マネージャーとして、Web3.0関連のプロジェクトなどに携わっています。
今回は、私自身のマネージャーとしての経験や学びについてお話ししたいと思います。
一般的に、エンジニアチームをまとめる役割は「エンジニアリングマネージャー(EM)」と呼ばれることが多いかと思います。本記事では、「マネージャー」という呼称で統一致します。テコテックでのマネージャー職は、主に中途・新卒採用の担当、事業部内案件の管理、部下の評価を行うほか、組織の成長に必要な施策の立案・実行など、多岐にわたる責務を担っています。
私が事業部内のマネージャーとして任命されたのは2024年の9月です。それ以前にもPMや、サブマネージャー(直接評価や採用には関わらないがマネージャーのサポートを行う役職)として5~6名のチームを率いる経験はありました。 しかし組織のマネージャーともなると、向き合う対象がぐっと広がり、一筋縄ではいかないなと実感する日々です。
マネージャーの仕事は単なる「指示」や「管理」では成り立ちません。 目に見えにくい"人と組織の摩擦"に向き合い、それを解きほぐしていく、非常に泥臭い仕事だと感じています。 しかしそれゆえに、AIの急速な進化の中で、人間だからこそできる仕事であるとも実感でき、充実感を感じる事も多いです。
自分がマネージャーに任命されてからの1年半で感じたマネージャーの役割や試行錯誤について、この記事でお伝えしていきたいと思います。なお、PMとしての業務については本記事では詳しく触れませんが、PMとしての経験については「プロジェクトマネージャーを経験して得た教訓集」にまとめていますので、ご興味があればそちらもご覧ください。
試行錯誤から見えたマネージャーの3つの役割
マネージャーになりたての頃は、「自分の役割とは何だろう?」と自問自答する日々でした。 そんな試行錯誤の中で、私なりに見えてきたマネージャーの重要な役割が3つあります。
- 羅針盤: 組織の方向性を示し、メンバーと目線を合わせる。
- 触媒: メンバー一人ひとりの主体性や成長を引き出し、化学反応を促す。
- 窓: 社内外の情報や人をつなぎ、新しい価値創造のきっかけを作る。
本記事では、この3つの役割について、私自身の具体的な経験や試行錯誤を交えながら、考えていることをお伝えしたいと思います。この記事を読むことで、マネージャーとしての役割を捉えるヒントや、日々の業務への向き合い方について、何か一つでも持ち帰っていただけたら幸いです。
なお、本記事の内容は、あくまで私個人のマネージャーとしての経験や考えに基づくものであり、テコテックとしての統一的な見解や定義を示すものではありません。その点、あらかじめご了承ください。
1. 羅針盤 – 方向性を示す
マネージャーの最初の重要な役割は、チームが進むべき方向を示す「羅針盤」になることだと考えています。組織全体の目標や戦略、あるいは上層部からのメッセージを正しく理解し、それをメンバー一人ひとりが「自分ごと」として捉えられるように翻訳して伝える役割です。
上長との対話を自ら作る
マネージャーとしての役割でまず大事に思うのが、マネージャーである自分自身が、自分の直属の上長とのコミュニケーションを密にすることです。組織が今どこを目指していて、そのためにチームに何を期待されているのか。その解像度を上げないことには、メンバーに的確な方向性を示すことはできません。
そこで、自ら上長(直属の上司や、さらにその上司)にお願いして、週次または隔週で1on1の時間を設定してもらっています。
この場で心がけているのは、業務報告や連絡事項の確認にとどまらず、「今、経営層ではどんな議論がされていますか?」「今期の組織戦略についてどのように考えていますか?」といった組織レイヤーの質問をして情報を得たり、議論して考えを深めたり、逆に私自身の組織運営に関する考えや課題感を率直にぶつけてフィードバックをもらったりする時間にしています。
こうした対話を通じて、組織全体の中で、私が担当するチームの位置づけや役割を把握し、メンバーに伝える情報の精度を高めるように努めています。
組織方針の理解と解釈
マネージャーになってから特に意識するようになったのは、組織の方針を深く理解し、自分なりに解釈することの重要性です。 期初に上長が定めた方針、全社総会での発表内容、そして会社の企業理念など、組織の方向性を示す情報を何度も読み返し、その背景や意図を自分の中に落とし込むように努めています。(マネージャーになる前は、明らかに出来ていなかったアクションです。)
なぜなら、日々の業務がこれらの方針とどう繋がっているのか、どのように整合性を取るべきなのか。それをマネージャー自身が明確に理解・解釈できていなければ、メンバーに対して目の前の仕事の意義や必要性を説得力を持って伝えることは難しいからです。 方針を自分の言葉で語れるようになって初めて、チームを正しい方向へと導く羅針盤の役割を果たせると考えています。
2. 触媒 – メンバーに向き合う
メンバー一人ひとりの力、特に主体性を引き出す「触媒」としての役割は、マネージャーにとって最重要だと考えています。
1on1は「対話」と「傾聴」の場
メンバーの主体性を引き出す上で、私が最も重視しているのが1on1ミーティングです。
毎回アジェンダを用意することは当初から実践していました。「これは目的を持った対話の時間なのだ」という共通認識を持つことは重要だと考えていたからです。
しかし、アジェンダの内容や対話の質は、試行錯誤を重ねてきました。 当初は、どうしても目先の業務に関する報告や相談が中心になりがちでした。もちろんそれも重要ですが、マネージャーとしての役割は、メンバーの短期的な業務遂行を支援するだけでなく、中長期的な成長やキャリア実現をサポートすることにあると考えています。
そこで最近は、意図的にアジェンダに「中長期的なキャリアの話」に繋がる話題を設定するようにしています。そして、そのテーマについて自由に話を広げてもらうことを意識しています。日々の業務から少し離れて、そのメンバーが将来どうなりたいのか、どんなことに価値を感じるのかといったWill(意志)の部分に焦点を当てる。そうした対話の中から、本人のモチベーションの源泉や、次の成長に繋がるヒントが見つかることが多いと感じています。
また、1on1は「内面的な部分」にも触れることのできる貴重な機会です。今どんな気持ちで仕事に取り組んでいるか、困っていることやモヤモヤしていることはないか、など、複数人がいる場では話しにくい「心の声」にじっくりと耳を傾け、傾聴することを大切にしています。こうした対話を通じて、メンバーが抱える課題や成長の種を見つけ、次の一歩を支援する。これが触媒としての重要な役割だと考えています。
3. 窓 – 社外とつなぐ
組織が持続的に成長していくためには、社内の視点だけでなく、社外の動きにも目を向け、必要な情報や刺激を取り込む「窓」としての役割も欠かせないと考えています。
外部の「風」を取り込む
私はエンジニア出身ということもあり、特にブロックチェーンなどの新しい技術動向には常にアンテナを張るようにしています。これはもはや趣味に近いかもしれませんが、自分の強みでもあると考えています。
マネージャーになってからは直接コードを書く機会は減りましたが、市場のトレンドや技術の進化をスピーディーにキャッチアップし、「こんな面白い技術があるよ!」「これはうちのサービスにも活かせるかも?」といった形でメンバーと共有することは意識的に勉強会等で行っています。まずは純粋に面白がり、そこから具体的な事業や開発に繋がるアイデアが生まれれば、関係者と相談しながら形にしていく。そんな「きっかけ作り」を大切にしています。
また、社外の勉強会に参加したりし、内容や感想を共有することも、外部の「風」を取り込み、組織を活性化させる上で有効だと感じています。最近では、事業部内で技術トピック共有会を実施し、生成AI、Web3.0などの最新技術について意見交換する場を設けました。この取り組みについては「次世代デジタル基盤開発事業部の技術トピック共有会レポート」でも紹介していますので、よろしければご覧ください。
4. 3つの役割の相互関係
ここまで、「羅針盤」「触媒」「窓」という3つの役割について述べてきました。これらは独立しているわけではなく、下図のように相互に連携し、影響し合っていると考えています。
まず、上部に位置する「羅針盤(方向性)」と「触媒(対話)」の間には双方向の矢印があります。羅針盤から触媒へは「方向性を示す」という働きかけがあり、逆に触媒から羅針盤へは「メンバーの声の集約」というフィードバックが行われます。このループにより、組織の方向性とメンバーの声が常に調和するよう循環しています。
そして下部に位置する「窓(外部視点)」は、組織の外からの情報や刺激を取り入れる役割を担います。窓から羅針盤へは「組織への新たな視点」を提供し、窓から触媒へは「メンバーへの新たな視点」をもたらします。
この構造により、組織内部で方向性と対話のループが回りながらも、外部からの視点によって常に新鮮な刺激が入る仕組みが維持されます。マネージャーはこの3つの役割をバランスよく果たすことで、組織の健全な成長と変化を促進することができると考えています。
おわりに
ここまでの話も踏まえ、マネージャーとは?を総括すると、「問いを立て続け、行動し続ける人」なのではと考えています。
- 組織の方向性を、私自身が腹落ちし、メンバーに明確に示せているか? (羅針盤)
- メンバーの成長を阻害している壁は何か?誰の心の中に摩擦が生まれているか? (触媒)
- 組織に必要な外部の知見は何か?社内外との繋がりは十分か? (窓)
これらの問いを常に自らやチームに投げかけ、考え、行動し続ける。そのプロセス自体が、組織を少しずつ前に進めていく力になるのだと信じています。 この記事が、皆さんのチームやご自身の役割について考える、何かのきっかけになれば嬉しいです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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