2023年のWeb3.0トピック大総括!~Web3.0はどこへ向かうか~

本投稿は TECOTEC Advent Calendar 2023 の1日目の記事です。

はじめに

こんにちは。次世代デジタル基盤開発事業部の鈴木康男です。 エンジニア・PMとして、Web3.0に関わるプロジェクトを担当しております。

さて、2023年もあと残り1か月余り。今年のWeb3.0トピックを振り返ってみます! 昨年に米国の大手暗号資産取引所であるFTXが破綻した余波があり、2023年は暗号資産の「冬相場」としてのスタートだったことが印象的です。
しかし冬相場でありつつも技術開発は虎視眈々と行われており、ここ数カ月の「雪解け」に繋がった印象があります。

それでは、各月ごとに1つトピックを取り上げて今年を振り返っていきます!

1月:Solana MobileがWeb3.0スマートフォン "Saga"を発表

「Web3.0スマートフォン」を謳うSagaが発表されました。暗号資産、NFTに触るのはPCブラウザからというのが主流である中、特化型のスマートフォンというのはインパクトのある発表でした。
今現在は、Sagaを使わずともモバイルで使用感の良いウォレットアプリが多数リリースされており、着実にWeb3.0のマスアダプションに向けて進展していることを感じます。

solanamobile.com

2月:米Coinbaseがレイヤー2ブロックチェーン「Base」のローンチを発表

暗号資産取引所として最大手であるCoinbaseが、Ethereumのレイヤー2ブロックチェーンを立ち上げる発表を行いました。Web3.0は分散化(Decentralized)が核となる概念です。当時は大企業、それも暗号資産取引所がブロックチェーンを立ち上げるということへの反発意見も見られました。
今現在は、ソーシャルアプリ(Friend.tech)の人気もあり、主要レイヤー2ブロックチェーンとして存在感を放っています。大企業による後ろ盾が多くの人にサービスを届けるためには必要である、というのがWeb3.0の現実であると証明されたと私は考えています。最近では、Web3.0のサービスに対し中央集権/非中央集権の二元論で論争が起こることがすっかり無くなっていますね。

cryptopotato.com

3月:Account abstractionの標準規格(ERC-4337)が実装される

Account abstraction(アカウント抽象化、以下AA)は、ブロックチェーンにおいて取引を発生させる人と、実行する人を分けるための技術です。(非常にざっくりですが・・。) AAによって、GoogleアカウントなどSNSアカウントでウォレットを作成することが可能になったり(秘密鍵やシードフレーズの管理が不要になる)、ガス代と呼ばれる手数料を他の人に代わりに払ってもらったり、といったことが実現できます。
そんなAAの標準規格については何年もEthereumのコミュニティで議論はされていたのですが、ついに実装レベルでの標準が公開されました。
この発表以降、ハッカソンのプロダクトであったり、ローンチされるウォレットアプリであったりは、瞬く間にAAを使ったものが増えました。活用方法が多岐にわたることや、初心者でも触りやすいウォレットの実現につながることから、今後も注目の技術であることは間違いありません。

cointelegraph.com

4月:日本でグローバルイベントの開催ラッシュ

Web3.0関連のハッカソンとしては最大級の「ETHGlobal」が東京で行われました。伴って、関連イベントも都内で多数開催されました。 ETHGlobalでは私もビルダーとして参加しました。冬相場ではあるけれども、開発者の熱量は相場など関係ない!ということを現場で体感できました。 入賞したプロダクトを見ると、前述のAccount abstractionや、ゼロ知識証明などの技術トレンドを押さえつつ、実用性も加味したものが多いのが印象的でした。 ethglobal.medium.com

また、ボランティアスタッフとして「DAO Tokyo」にも参加しました。Maker DAOなど、グローバルで最前線にあるDAOのコアコントリビューターが集まり、熱いトークセッションを繰り広げていました。
会場では、交流スペースが終始ネットワーキングで盛り上がっていた様子が印象的でした。皆、DAOという人類の実験を共通に楽しむ仲間という雰囲気を感じました。企業の要人が集まるフォーラムとは全く違い、組織の垣根などなくコミュニケーションが行われている様子に、Web3.0がもたらす自由さを感じられました。 dao-tokyo.xyz

5月:ERC-6551「トークンバウンドアカウント」規格が公開

NFT自体がウォレットのように他のNFTを紐づけることができ、いわば「NFTの詰め合わせ」を作れる規格であるERC-6551が公開されました。NFTの販売方法やホルダーへのエアドロップに活用できる可能性が大きく、エンジニアに限らずNFT好きからも注目を集めた発表でした。

人気コレクションであるShinsei Galverse では、ERC-6551が導入されています。 note.com

6月:Polkadot主催のハッカソン「HackaDOT 2023」がソウルで開催

Astar Networkが接続しているエコシステムである「Polkadot」主催のハッカソンが開催されました。 デモデイ(プレゼンテーション)は韓国のソウルで行われました。 私はこの時Astar Networkが持つスマートコントラクト規格である「WASM」を触っていたのもあり、チームの一員として開発に参加しました。 ソウルのデモデイにも参加し、結果は残念ながら入賞ならずでした。しかし現場で韓国の開発者や業界の人と交流し、韓国もWeb3.0のテクノロジーに大いに期待を寄せて取り組んでいるという熱量を感じてきました。
Astar Networkは、今後韓国市場にも注力していくといった発表を最近行っています。Web3.0×韓国は要注目ですね。

チームで制作したプロダクトの紹介記事です。

note.com

7月:日本最大級のWeb3.0国際カンファレンス「WebX」開催

東京国際フォーラムで大規模に開催されました。国内外の業界人が集結してパネルディスカッションを繰り広げていました。様々なディスカッションを聴講する中で共通して感じたのは、「日本×Web3.0」への期待感の高さです。米国がFTX崩壊の余波でWeb3.0に関しては止まっている分、今日本がこの業界のグローバルリーダーになるんだという気概を感じられました。
現に、レイヤー1ブロックチェーンとしてグローバルなポジションを高めつつあるAstar Networkや、世界に先駆けて法律整備を行った「ステーブルコイン」関連の取り組みを聞くと、日本のポテンシャルを感じます。 coinpost.jp

8月:主要DEXである「Curve」がハッキング被害

ステーブルコイン間のトークン交換で人気のある「Curve」がハッキング被害を受けました。使用していたプログラミング言語自体の脆弱性が原因でした。
実績のあるDEXでの事件だったたけに、業界では様々な議論が起こりました。
スマートコントラクトでは「Code is law(コードこそが法律だ)」と言われたりしますが、プログラミング言語自体の脆弱性でハッキングされるならば、コードが法律とはもはや言えない、というような指摘。
また、Curveの創業者マイケル・エゴロフ氏が、CRVトークンを担保に多くの借り入れを行っており、DeFiのエコシステム全体が危機にさらされたことで、「分散型金融は夢物語で、一部の資本家の支配構造は既存金融と何ら変わらない」という悲観的な意見も見受けられました。
私個人の考えとしては、脆弱性のリスクはWeb2もWeb3.0も変わらない(特に今回の原因はWeb3.0の問題ではない)し、今現在はDeFiのメリット/デメリットをユーザーが理解するための途上に過ぎない、と思っています。一度のハッキングで全否定ではなく、確かにあるメリット(既存金融が不安定な国での資産運用手段など)とデメリットのトレードオフを理解して、発展させていくことが必要ではないでしょうか。 www.coindeskjapan.com

9月:Nouns DAOがフォーク(分裂)

NFTを活用し、非常に純度の高いDAOであるNouns DAO。コミュニティの投票により、なんとフォーク(分裂)することが可決され、実行されました。規模が大きくなるにつれコミュニティとしての意思決定が難しくなったことや、NFTオークションの価格下落を突いて利鞘を得ようとするアービトラージャーたちの流入により、フォーク賛成派が増えたためです。
Nouns DAOはスマートコントラクトを中心に運営されるDAOの象徴的存在だっただけに、DAOという組織形態の現実を突きつけられた事件でした。 しかしDAOはあくまで手段です。「Nouns DAOがいったい組織として何をしたいのか??」、すなわちDAOのビジョンが明確でないように感じられた点も、フォークに至った背景としては大きいのではと考えます。 decrypt.co

10月:ビットコインはじめ暗号資産全般の相場が回復傾向に

「いよいよ冬相場が終わり、雪解けか??」という声がチラホラ聞こえ始めた10月。私個人としてはあまり暗号資産の相場自体には興味が無い方ではあるのですが、気分が良いことには違いないですね(笑)。 ビットコインのETFが承認されるかも、というニュースの影響が大きいと言われています。ビットコインに連動したETFが承認されれば、これまで暗号資産への投資がしづらかった機関投資家の参入が見込め、暗号資産業界全体への資金流入が加速することになります。
※この情報は一般的な情報提供のためであり、具体的な投資助言を提供するものではありません。

coinpost.jp

11月:①人気アニメ「The Simpsons」でNFTが登場

世界的に人気のアニメ「The Simpsons」でNFTのエピソードが放映されました。エピソードのあらすじを見てもなかなかに意味不明で笑えます。

デジタルスキャナーによってブロックチェーンの世界に取り込まれ、人類初のNFT人間となったバートを救い出すべく、母のマージが自らもブロックチェーンの世界に飛び込み、救出に向かう

誰もが暗号資産ウォレットを持つようなマスアダプションにはまだ何年もかかりそうですが、再び世界的なNFTバブルが来るなどすれば、業界の発展に繋がることは間違いありません。バブルの時期と、冬相場だけどもコツコツと技術開発するフェーズと、両方を繰り返して発展していくのだと思います。私はブロックチェーン、Web3.0の技術面だったり、人との新たな繋がりのきっかけとなる点(NFTをきっかけに普通であれば出会わないような人たちとコミュニティで繋がれるなど)に魅力を感じています。次の冬相場でもワクワクを失わずにいたいものです。 nft-news-japan.jp

11月:②マーケットプレイスBlurの創設者であるPacman氏、イーサリアムレイヤー2「Blast」を発表

投機家を多く惹きつけそうなコンセプトのレイヤー2ブロックチェーンが発表されました。 通常のレイヤー2は、Ethereumのようにバリデーターにトークンを預けて利回りを得る仕組みがありません。 しかしBlastでは、Ethereum本体の利回りを利用したり、MakerDAOと連動しステーブルコインの利回りを得ることができる仕組みとのこと。 アプリケーションを誘致するため、開発者向けの助成金もふんだんに出すことがアナウンスされています。 メインネットのローンチは2024年2月を予定。Baseチェーンのようにレイヤー2の台風の目になるかもしれません。 coinpost.jp

さいごに

いかがでしたでしょうか?非常に流れの速い業界ですので、来年になったら何が起こるのか、誰も正確に予想はできません。しかし何が起ころうと、自分の中のワクワクする気持ちを失わず、ニュースや技術動向についていくことが大事だと思っています!
読んでいただいた方に僅かでも発見や刺激がありましたら幸いです。

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