【月刊】Web3.0トピック振り返り~2024年3月編~

はじめに

こんにちは。次世代デジタル基盤開発事業部の鈴木康男です。エンジニア・PMとして、Web3.0に関わるプロジェクトを担当しております。

「【月刊】Web3.0トピック振り返り」では、毎月Web3.0関連で気になったトピックを取り上げて紹介していきます。

1. フルオンチェーンゲーム「Mugen Craft」から感じる、プロトコルとしてのゲームの可能性

フルオンチェーンゲームを制作する開発集団であるBaratieより、Baseチェーンを使った「Mugen Craft」がリリースされました。 Baratieは、日本人のメンバーを中心に構成されています。 フルオンチェーンゲームとは、ゲームのデータに加え、ゲームのロジックもブロックチェーン上に存在するゲームを指します。 (厳密な定義には複数の見解が存在し、定まっていませんが、ここではその詳細な説明を省略します。)

Mugen Craftは、複数の言葉を組み合わせると新たな言葉に変化する、という非常にシンプルなゲームです。 ユーザー自身が、組み合わせを定義することができ、ユーザー生成コンテンツとしてブロックチェーン上に未来永劫残ることが特徴です。

一見、とても簡素な見た目であるため、リッチなビジュアルをゲームに期待する人には拍子抜けするかもしれません。 しかし、敢えてUIを簡素にしているそうです。フルオンチェーンゲームの場合、ゲームのロジックもブロックチェーン上にあり、誰でも流用が可能なため、別のゲーム開発者がリッチなビジュアルを用意し、裏側でブロックチェーン上のロジックを呼び出す、というゲームの作り方も可能になります。まさに、ゲーム自体がプロトコルのように機能することになります。

フルオンチェーンゲームの動向は、昨今のPlay to Earnとは別文脈で発展しており、Web3.0の非中央集権性、透明性を体現するムーブメントとして個人的にとても期待を持っています。 東京でも大規模なミートアップイベントが催され、好評だったようです。

ethereumnavi.com

2. イーサリアム「Dencun」、実装完了 レイヤー2手数料削減へ

イーサリアムの大型アップグレードである「Dencun」が完了しました。 このアップデートでは、イーサリアムのレイヤー2チェーンのガス代(手数料)の大幅な削減が実現されました。ますますレイヤー2チェーンのエコシステム拡大に期待が集まっています。

レイヤー2チェーンは、トランザクションを実行した結果のデータをレイヤー1であるイーサリアムに書き込み、その真正性を担保しています。 アップデートによって、データの書き込み先の領域が変更されました。この変更によって、イーサリアムに対してデータを書き込む時のガス代が大幅に削減され、結果的にレイヤー2チェーンのガス代も削減されたということになります。

Base, Blast, Astar zkEVMなどレイヤー2チェーンにとって追い風となるアップデートです。 coinpost.jp

3. Espresso Systemsがa16zより資金調達し、共有シーケンサーによる分散化を加速させる

Espresso Systemsは、レイヤー2チェーンにおいて、中央集権的なリスクを軽減し、分散性を高めることを目的にした仕組みです。 レイヤー2チェーンでは、シーケンサーと呼ばれる役割が、レイヤー1へのデータ送信で重要な役割を担っています。 現状、多くのレイヤー2チェーンではシーケンサーは中央集権的な性質で成り立っており、一部のシーケンサーがシーケンサー収益を独占したり、トランザクションの前後関係を操作して不正に利益を上げたりということも仕組み上有り得てしまいます。

Espresso Systemsでは、共有シーケンサーという仕組みによって、シーケンサーが行う作業の権利をオークション形式にすることで、分散化を行うことができます。 Web3.0の根本にある非中央集権性は、昨今のサービスでは重要視されていない印象も個人的にはあります。しかし、ブロックチェーンのコアな箇所での分散化を追求するというEspresso Systemsのビジョンは、Web3.0の潮流の源を思い出させてくれます。

www.coindesk.com

4. NTT Digital、暗号資産ウォレット提供開始

NTT Digitalより、暗号資産やNFTを扱うことができるデジタルウォレット「scramberry WALLET(スクランベリー・ウォレット)」がリリースされました。日本を代表するNTTグループのWeb3.0進出とだけあって、以前から動向に注目が集まっていたプロダクトです。

私も早速、ウォレットアプリを試してみました。まず感じたのは、そのデザインの美しさです。 画面項目の視認性に優れ、直感的に操作できるUIであると感じました。

出典:scramberry WALLET - みんなのデジタルウォレット

また、アカウント作成が非常に簡単で、従来のウォレットのようにシードフレーズを書き留める手間がありません。 初めてウォレットを作る方々にとって、非常に親しみやすいオンボーディング体験を提供していると感じました。

ウォレットのマーケティング戦略を考える立場を想像してみますと、既にウォレットを保有しているユーザーへの訴求力を高め、メインのウォレットとして乗り換えてもらう施策がこれから重要になると感じました。 NTTグループの強みを活かしたサービス展開には、大いに期待が持てます。

www.coindeskjapan.com

scramberry.io

今回取り上げたトピックは以上です! 次回もぜひご一読ください。

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