はじめに
こんにちは。次世代デジタル基盤開発事業部の鈴木康男です。エンジニア・PMとして、Web3.0に関わるプロジェクトを担当しております。
「【月刊】Web3.0トピック振り返り」では、毎月Web3.0関連で気になったトピックを取り上げて紹介していきます。
1.予測市場Polymarketの急成長から見える、新たな情報インフラの可能性
暗号資産を活用した予測市場Polymarketが、2024年の米大統領選に関連して急成長を遂げています。11月の取引高は5日間で2023年全体の取引高を上回り、10月には過去最高の10億ドルを記録。特に注目すべきは、予測市場の結果が従来のメディア報道よりも正確な予測を示す可能性が指摘されている点です。
2024年の米大統領選挙において、Polymarketは新たな形の情報インフラとしての存在感を示しています。同プラットフォームでは、トランプ氏の当選確率が62%と予測され、この数字はビットコイン価格との相関関係も見せています。予測市場の特徴は、参加者が実際の資金をベットすることで、より正確な予測が導き出される点にあります。金銭的インセンティブが、参加者の「本心の予想」を引き出すメカニズムとして機能しているのです。
ブロックチェーン技術の活用により、取引の透明性が確保されている点も重要です。従来のメディアでは、報道バイアスや政治的な影響を受ける可能性がありましたが、予測市場では参加者の集合知が数値として可視化されます。しかし、市場参加者の偏りや、投機的な要素が予測の精度に影響を与える可能性は否定できません。
Polymarketの成功は、情報の信頼性や価値判断において、従来のメディアに依存しない新たな可能性を示唆しています。従来のメディアと予測市場が相互に補完し合い、より正確で信頼性の高い情報エコシステムを構築していくことが期待されます。 thedefiant.io
2.テザー社による資産トークン化プラットフォーム「Hadron」の展開 - Web3.0における新たな可能性
テザー社が、株式や債券、ポイントなど幅広い資産のトークン化を実現するプラットフォーム「Hadron by Tether」の提供を開始しました。同プラットフォームは、KYCやAMLなどのコンプライアンス機能を備え、機関投資家から個人まで幅広いユーザーの参加を可能にします。
テザー社による資産のトークン化プラットフォームの提供は、Web3.0における重要な一歩と言えます。これまでテザー社は、USDTをはじめとするステーブルコインの発行者として知られてきましたが、今回のHadronの提供により、より広範な資産のトークン化に向けた基盤を提供することになります。
特に注目すべきは、テザー社が既に確立している信頼性とインフラを活用できる点です。USDTは暗号資産市場で最も流動性の高いステーブルコインとして知られており、この実績は新プラットフォームの信頼性向上にも寄与するでしょう。実際に、テザー社は最近、中東での原油取引にUSDTを活用するなど、実体経済との接点を着実に広げています。
ただし、中央集権的な機関であるテザー社への依存度が高まることは、Web3.0の分散化という理念との間で一定の緊張関係を生む可能性があります。プラットフォームの成功には、テザー社による適切な管理と透明性の確保が不可欠となるでしょう。とはいえ、現物資産のトークン化において信頼できる仲介者の存在は必要不可欠であり、テザー社のような確立された企業がその役割を担うことで、トークン化市場の発展が加速する可能性は高いと考えられます。 www.neweconomy.jp
3.AIエージェント×Web3.0の新潮流 - ETHGlobal Bangkokハッカソンからの考察
タイ・バンコクで開催されたETHGlobalハッカソンにおいて、713のプロジェクトが参加し、その中でAIエージェントを活用したプロジェクトが注目を集めました。審査員の一人であるBase開発者のWill Binnsは、トークン化とAIエージェントという2つの顕著なトレンドが見られたと指摘しています。
特に興味深いのは、DAOGenieというプロジェクトです。これはDAOの投票に基づき、AIエージェントが購入、寄付、コミュニケーション、その他のタスクを自動的に実行するというものです。また、Industry.aiでは4つの専門AIエージェントがチームを組んで、複雑なブロックチェーン操作を処理するというアプローチを取っています。
このようなAIエージェントとブロックチェーンの組み合わせは、Web3.0の新たな可能性を示唆しています。AIが自律的かつ高速に取引を実行できることは、両技術の相乗効果として理解しやすく、大きな潜在力を秘めています。
しかし、AIエージェントによる取引が急増した場合の影響も考慮する必要があります。現在は低いガス代を特徴とするブロックチェーンが人気を集めていますが、むしろある程度の手数料を課し、取引速度や量に制限を設けるチェーンの方が、長期的には経済的な合理性を持つ可能性もあります。これは、AIエージェントの活動が市場に与える影響をコントロールする一つの手段となり得るからです。
AIとWeb3.0の融合は、テクノロジーの進化における重要な一歩ですが、その影響を慎重に見極めながら、持続可能な発展を目指していく必要があるでしょう。 www.theblock.co
4.NFTによる消費体験の証明 - サントリーの実証実験から見る新たな可能性
サントリーが限定ビール「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム 山崎原酒樽熟成 2024」において、アバランチブロックチェーン上でNFTを発行する実証実験を開始しました。ボトルに搭載されたNFCタグを通じて、開封時にNFTが消費者に付与される仕組みです。
この取り組みは、日常的な消費行動をブロックチェーン上で証明する新しい形として注目に値します。特に興味深いのは、この仕組みがもたらす二つの可能性です。
まず一つ目は、消費行動の証明に基づく新しいサービス展開です。例えば、特定の商品の購入・消費履歴を持つユーザーに対して、企業が独自のサービスやリワードを提供するといった展開が考えられます。これは既存のポイントプログラムとは異なり、ブロックチェーン上で透明性を持って管理されます。
二つ目は、Web3.0ならではの相互運用性です。従来型のポイントプログラムとは異なり、NFTによって証明された消費行動データは、発行元企業以外のサービスでも活用できる可能性があります。例えば、あるビールブランドの愛飲者であることが証明されれば、他の企業からも関連サービスを受けられる可能性が広がります。
ただし、この相互運用性は個人の消費行動の公開を前提とするため、プライバシーの観点から慎重な検討も必要でしょう。消費者にとってのメリットと、情報公開に伴うリスクのバランスを取りながら、新しい価値を創造していくことが求められます。 www.neweconomy.jp
5.米国の政権交代とWeb3.0の未来 - 暗号資産の社会的意義を問う
トランプ次期大統領が、暗号資産に好意的なスタンスで知られるスコット・ベセントを財務長官に指名しました。ベセントは戦略的ビットコイン準備構想の支持者として知られ、デジタル資産を金融の未来における重要な要素と位置付けています。
この人事は、米国における暗号資産政策の転換点となる可能性を秘めています。しかし、ここで重要なのは、単なる投機的な相場の盛り上がりではなく、ブロックチェーンやWeb3.0技術が社会にもたらす本質的な価値です。
確かに、暗号資産市場は活況を呈していますが、これはブロックチェーンが持つ可能性の一側面に過ぎません。より重要なのは、この技術が社会課題の解決にどう貢献できるかという点です。特に米国では、経済格差の拡大が深刻な問題となっていますが、Web3.0技術は個人に対してデータや資産の主権を取り戻す機会を提供する可能性があります。
例えば、分散型金融(DeFi)は従来の金融システムから疎外されてきた層にもサービスを提供できる可能性があり、DAOは新しい形の組織運営と意思決定の可能性を示唆しています。このような技術革新が、単なる投機の対象ではなく、社会的な価値を生み出す方向に発展していくことが望まれます。
米国の新政権下での政策変更は、Web3.0技術の社会実装を加速させる可能性がありますが、同時にそれが真に社会に貢献するイノベーションとなるよう、私たちは技術の発展の方向性を注視していく必要があります。 decrypt.co
今回取り上げたトピックは以上です! 次回もぜひご一読ください。
テコテックの採用活動について
テコテックでは新卒採用、中途採用共に積極的に募集をしています。 採用サイトにて会社の雰囲気や福利厚生、募集内容をご確認いただけます。 ご興味を持っていただけましたら是非ご覧ください。