はじめに
こんにちは。次世代デジタル基盤開発事業部の鈴木康男です。エンジニア・PMとして、Web3.0に関わるプロジェクトを担当しております。
「【月刊】Web3.0トピック振り返り」では、毎月Web3.0関連で気になったトピックを取り上げて紹介していきます。
1. 暗号資産の保有者数とアクティブユーザー数が過去最高水準に達する
a16z crypto(Andreessen HorowitzのWeb3.0ベンチャーキャピタル部門)は、暗号資産の活動と利用が過去最高水準に達したとする報告書を発表しました。 同報告書によれば、2024年9月時点で世界の暗号資産保有者は約6億1,700万人に上り、月間アクティブユーザー数は最大6,000万人と推定されています。 a16z cryptoの最新レポートが示す6億人以上という保有者数は、暗号資産がもはや一部のテクノロジー愛好家だけの世界ではなくなったことを如実に表しています。
報告書では増加の要因として、Layer 2ソリューションやSolanaはじめ取引手数料の安いチェーンの躍進が挙げられています。 取引手数料が大幅に低下し、より実用的なユースケースが生まれやすい環境が整ってきています。
しかし、日本市場に目を向けると、やや様相が異なります。私個人の感覚としては、身近な範囲では新規参入者の増加を実感しにくく、グローバルトレンドとの温度差を感じます。 この背景には、規制環境の違いや、日本市場特有のニーズに応えるキラーアプリケーションの不在があるのではないでしょうか。
今後は日本市場でも、分野によってはより身近なサービスとして暗号資産が浸透していく可能性はあります。 特に、IPコンテンツに強みのある日本では、エンターテインメント領域での応用が、日本市場でのブレイクスルーとなるかもしれません。
グローバルでの利用者増加は、暗号資産市場の成熟と実用化への期待を高めています。 この潮流が日本市場にも波及することを期待したいと思います。
2. Uniswapが独自L2チェーン「Unichain」を発表
大手DEX(分散型取引所)のUniswap Labsが、独自のイーサリアムLayer2(L2)ソリューション「Unichain」のテストネットを発表しました。 この新チェーンは、複数のL2を相互接続し、セキュリティと技術スタックを共有できるプラットフォームである「Optimism Superchain」の一部として展開されます。
注目すべき特徴は、MEV(Miner Extractable Value:ブロック生成において取引順序を操作することで得られる利益)の専門組織であるFlashbotsの革新的なRollup Boost機能を初めて統合した点です。 この統合により、ローンチ時点で1秒のブロック生成時間を実現し、将来的には1秒未満も視野に入れています。
従来は高度な技術力と多大なリソースが必要だったL2の立ち上げが、Optimism Superchainのような基盤技術の整備により、より容易になってきています。 UnichainはDEX運営者としての知見を活かし、DEXに最適化されたチェーンとして設計されています。
今後も様々な用途に特化したL2チェーンの登場が予想されます。 丁度近いタイミングで、Sam Altmanが創設したWorld Network(旧Worldcoin)も新たなL2ブロックチェーン「World Chain」を発表しています。
3. Uniswapがマルチチェーンブリッジング機能を実装、ユーザー体験の向上へ
Uniswapが9つのネットワークにまたがるブリッジング機能を実装したことが発表されました。この機能はUniswapのインターフェースやウォレットから直接利用することができます。 対応ネットワークには、Ethereum、Base、Arbitrum、Polygon、OP Mainnet、Zora、Blast、World Chain、ZKsyncが含まれています。 この機能実装の背景には、従来のブリッジ操作における課題がありました。これまでユーザーは外部のブリッジサービスを利用する必要があり、不慣れなインターフェースの操作や長い取引時間への対応を強いられていました。 Uniswapの新機能は、Across Protocolという既存のブリッジプロトコルを統合することで実現しています。 完全に新しいブリッジプロトコルを開発するのではなく、既存の信頼できるプロトコルを統合することで、安全性と使いやすさを両立させる戦略と言えます。
この統合は、特に暗号資産初心者にとって大きなメリットとなると感じました。一つのプラットフォームでスワップ(同一チェーン上でのトークンの交換)とブリッジングの両方が可能になることで、操作の煩雑さが大幅に軽減されます。 今回の機能追加は、分散型取引所における市場シェア競争が激化する中での、Uniswapの積極的な機能拡充の一環として注目に値します。
4. Web3.0 SocialFiの現実:Farcasterに見る課題と展望
Web3.0のSocialFiプラットフォーム「Farcaster」が深刻な低迷期を迎えています。10月の収益はわずか1万ドルで、1日あたりの投稿・反応数は前四半期と比べ71,000から33,000へと半減し、新規アカウント登録も75%減少しています。約1.8億ドルもの資金調達を実現し、10億ドル以上の評価額を得ていたプロジェクトの現状です。
このFarcasterの状況からWeb3.0業界の重要な示唆が読み取れます。確かに今年、Vitalik Buterinをはじめとするイーサリアムのコア開発者たちが積極的に利用を始め、開発者コミュニティ内では大きな盛り上がりを見せました。しかし、既存のSNSプラットフォーム、特にX(旧Twitter)の持つ巨大なネットワーク効果を覆すには至りませんでした。
Web3.0プロジェクトの成功には、技術的な革新性だけでなく、既存サービスに対する明確な優位性と、一般ユーザーを惹きつける独自の価値提案が不可欠だと感じました。
5. イーサリアムの進化 - ブロックタイム短縮で目指す新たな安定性
イーサリアムの開発コミュニティで、ブロックタイムを12秒から8秒に短縮するEIP-8931という提案が注目を集めています。
本提案の核心は「ピーク帯域要件の低減」にあります。ブロックタイムを短縮することで、1ブロックあたりのトランザクション数が減少し、ネットワークの瞬間的な負荷を抑えることができます。 これにより、ブロックの伝搬時に発生する通信量を最適化し、ネットワークの遅延リスクを低減させることが期待されています。
一方で、この変更はノードのハードウェア要件を引き上げる可能性があります。 私見では、イーサリアムの競争力において、ハードウェア要件の低さは必ずしも最重要な要素でないため、ネットワークの安定性の向上を優先するのが望ましいと考えています。
今回取り上げたトピックは以上です! 次回もぜひご一読ください。
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