【月刊】Web3.0トピック振り返り~2024年5月編~

はじめに

こんにちは。次世代デジタル基盤開発事業部の鈴木康男です。エンジニア・PMとして、Web3.0に関わるプロジェクトを担当しております。

「【月刊】Web3.0トピック振り返り」では、毎月Web3.0関連で気になったトピックを取り上げて紹介していきます。

1. イーサリアム現物ETF、米SECが承認

5月24日、米国証券取引委員会(SEC)は、ブラックロックなど8つの銘柄に対してイーサリアム(ETH)現物ETFを承認しました。イーサリアムはビットコインに比べると中央集権性が高い(金のようなコモディティとみなされづらい)ため、 ETFの承認は難航すると予想する見方もありました。しかし、ビットコインに遅れることわずか数か月で承認されたことになります。

2024年は米国の大統領選挙の年であり、暗号資産業界を味方につけたい候補者による思惑が判断に影響を与えているのではという憶測もありますが、定かではありません。 とはいえ、暗号資産の動向が大統領選挙と無関係ではなくなったことには、暗号資産の大衆化の表れと感じます。

イーサリアム現物ETF承認により、機関投資家からの資金流入が期待されます。しかし、暗号資産業界が本質的に発展していくためには、技術のアップデートとユースケースの拡大が依然として重要と個人的には考えています。

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2. ソラナ、日本市場に本格参入

ソラナ(Solana)は、高速な処理能力と、トランザクションのコストの低さを特徴とするブロックチェーンです。 ソラナはFTX破綻後、開発者コミュニティが弱体化し、そのまま沈むかと思われていました。 しかし、冬相場を乗り越え、2024年6月21日の執筆時点ではTVL(Total Value Locked)で3位のチェーンとしての地位を確立しています。 今年に入ってからのDeFiプロトコルのエアードロップやミームコインのムーブメントにおいても中心的な存在であり、注目を集めています。

日本国内では、これまでソラナの開発者コミュニティはあまり活発ではありませんでした。しかし、元dYdXの大木氏がSuperteam Japan代表に就任したことにより、日本市場でのソラナの存在感が一気に高まることが期待されています。非EVMチェーンとして、イーサリアム(Ethereum)とは異なるポジションを取るソラナのようなチェーンの存在は、ブロックチェーン間の健全な競争のため重要だと考えます。

ソラナの特徴の一つは、スマートコントラクトをRustで実装する点です。 近年、Rustはバックエンド開発言語としてマイクロソフトやFigmaなどの 大手企業でも採用 されており、ソラナのエンジニアコミュニティの拡大に大きな可能性を秘めています。Rustの堅牢性と性能の高さは、ソラナの技術基盤を支える重要な要素となっています。

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TVLのランキングは以下ページを参照しております。 coinmarketcap.com

3. PayPal、ステーブルコイン「PYUSD」をソラナ上で発行することを発表

PayPalは、2023年にイーサリアム(Ethereum)上で発行したステーブルコイン「PYUSD」をソラナ(Solana)ブロックチェーン上でも発行することを発表しました。

現在、イーサリアム上のPYUSDは1万人以下のホルダーしかおらず、市場規模も約4億ドルと、競合のCircleやTetherに比べて小規模で、成功しているとは言えません。 技術面では、イーサリアムのステーブルコイン決済は処理速度の遅さやガス代の高さが課題でした。

しかし、ソラナは高速な処理速度かつ低いガス代の特性を持っているブロックチェーンです。 PayPalがPYUSDをソラナ上で発行することで、イーサリアムのステーブルコイン決済が抱えていた課題が大きく改善されることが期待されます。 PayPalの既存の顧客基盤と組み合わさることで、小売決済の新たなスタンダードとなり得るポテンシャルもあると感じます。

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4. ステーブルコインとカーボンクレジットの未来: 日本企業とKlimaDAOの連携に期待

三菱UFJ信託銀行、株式会社Progmat、株式会社JPYC、KlimaDAO、株式会社オプテージは、「Progmat Coin(プログマコイン)」基盤を活用して発行されるステーブルコイン「JPYC(信託型)」をブロックチェーンベースのカーボンクレジット(排出権)マーケットプレイスの決済に活用するための共同検討を開始しました。

カーボンクレジットのトークン化は、企業が二酸化炭素排出量をオフセットするために必要な市場の透明性と信頼性を高めます。 また、ステーブルコインは一般消費者の決済よりも、企業間決済に適していると言われています。特に、国境を越えた取引では、従来の銀行システムに比べて迅速かつ低コストで行える点が強みです。 カーボンクレジットを企業間で決済する時の手段として、ステーブルコインを活用することは、とても相性が良いように思います。

国内の大手企業と、グローバルの気候金融分野で実績のあるKlimaDAOのようにWeb3.0に早くから取り組んできたDAOが連携することも非常に興味深いです。 グローバルを前提とした展開には期待を持てます。 ステーブルコインの新しいユースケースを示すだけでなく、環境保護と経済成長を両立させる可能性を秘めていると感じます。

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5. トヨタ自動車、安全運転ドライバーにNFT証明書を発行

トヨタ自動車のサブスクリプション子会社であるKINTOは、安全運転を行ったドライバーに対してNFT(非代替性トークン)証明書を発行する実証実験を開始しました。 この取り組みは、ブロックチェーン技術を活用して、安全運転の記録を改ざん不可能にし、信頼性の高い形で保存することを目指しています。

ブロックチェーンを利用する意義は、データの耐改ざん性を確保し、特定のプラットフォーマーに依存せずに共通化したシステムを提供できる点にあると考えています。 安全運転の証明は、その重要性から容易に改ざんやなりすましができてはいけません。また、特定の事業者だけでなく、自動車業界全体で共通のシステムが存在することが求められます。

この実証実験は、ライドシェアが普及しつつある現代において、有用なユースケースになり得ると思いました。 ライドシェアでは、ドライバーの運転スキルや安全性が利用者の選択に大きな影響を与えるため、信頼性の高い安全運転の証明が必要です。 ブロックチェーン技術を活用することで、安全運転の証明が信頼性を持つことから、自動車業界全体で証明の利用が促進されると考えます。

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今回取り上げたトピックは以上です! 次回もぜひご一読ください。

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