【月刊】Web3.0トピック振り返り~2024年7月編~

はじめに

こんにちは。次世代デジタル基盤開発事業部の鈴木康男です。エンジニア・PMとして、Web3.0に関わるプロジェクトを担当しております。

「【月刊】Web3.0トピック振り返り」では、毎月Web3.0関連で気になったトピックを取り上げて紹介していきます。

1. イーサリアムコミュニティ開発者カンファレンス「EDCON 2024」が渋谷区で開催

世界最大規模のイーサリアムコミュニティ開発者カンファレンス「EDCON 2024」が、7月24日から30日にかけて東京・渋谷区で開催されました。 アジア初となる今回のEDCONでは、国連大学や国立代々木競技場など複数の会場で、イーサリアムの共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏をはじめとする著名人によるトークセッション、ハッカソン参加者によるピッチ、有志によるサイトイベントなどが行われていました。

私は最終日の30日にメインイベントを聴講しました。 ブテリン氏の講演では、イーサリアムの9年間の進化が詳細に語られました。 2015年の誕生時には100人未満だった開発者コミュニティが、現在では巨大なエコシステムへと成長を遂げていること。 スケーラビリティの向上、手数料の削減、セキュリティの強化、そして電力消費量削減による環境への配慮など、イーサリアムは多くの課題を着実に解決してきたことが語られました。 また、イーサリアム上に構築される分散型アプリケーション(DApps)について、ウォレットやSNS、投票アプリなどでは2015年当初と比べて、劇的にユーザー体験が向上していることに言及していました。

私見として、2、3年前にWeb3.0がバズワード的に広まったときと比べると業界の発展ペースは落ち着いてきており、マスアダプションもまだ実現していません。 しかし、ブテリン氏の講演を聞いて、2015年当時と比較すれば、現在のイーサリアムのエコシステムは確実に進化していることを実感しました。

今後10年間のイーサリアムの展望について、ブテリン氏は継続的な技術改善とアプリケーションの革新に焦点が当てられると予想しています。 10年先というと、イーサリアムをはじめとするWeb3.0の技術がどのようなアプリケーションを生み出すか、誰にも正確に予測できません。 予測がつかないことこそが、この分野の持つ可能性を示しているのだと、改めて認識させられました。

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2. Web3.0技術で電力インフラ管理が変わる?「PicTrée(ピクトレ)」実証実験開始

参加型社会貢献コンテンツ「PicTrée(ピクトレ)~ぼくとわたしの電柱合戦~」の実証実験第2弾として、東京都の千代田区、中央区、港区の地域を対象に実施されることが発表されました。(第1弾は前橋市で行われました。) ピクトレは、ユーザーが電柱やマンホールを撮影し、電線の長さを競う携帯ゲームアプリです。 本実証実験は、Digital Entertainment Asset(DEA)、東京電力パワーグリッド、Greenway Grid Global(グリーンウェイギルドグローバル:GGG)が共同で実施します。 ユーザーの写真は設備点検に活用され、電力会社が異常を早期発見することに繋がります。さらに、ユーザーは活躍に応じてAmazonギフト券や暗号資産DEPが報酬として得られます。

ピクトレは企業とユーザーのWin-Winな関係を構築する画期的な取り組みだと考えます。電力会社にとっては広範囲の設備状態を効率的に把握できるメリットがあり、ユーザーは遊びながら社会貢献できる上に報酬まで得られます。 今後、この手法が他のインフラ設備にも応用される可能性は大いにあります。ブロックチェーンで実現できる新たな社会貢献のユースケースとして、その展開に大いに期待が持てます。

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3. トヨタ・ブロックチェーン・ラボ、ブロックチェーンで車をスマートアカウント化する構想を発表

トヨタ・ブロックチェーン・ラボが、イーサリアムのパブリックブロックチェーン上で車両をスマートアカウントとして管理する構想を発表しました。 スマートアカウントは、ブロックチェーン上で認証や独自ロジックの柔軟な追加など、高度な機能を持つアカウントの一種です。 この構想では、車両の使用権(鍵)をNFTでトークン化することも目指しています。

この構想でのスマートアカウントは、ERC-4337というイーサリアムのアカウント抽象化標準に基づいて設計されています。 車両ごとにアカウントを作成し、車に関する様々な権限や情報を柔軟に管理することが可能になります。例えば、車の所有者、ユーザー、メーカー、ディーラー、行政機関など、複数の関係者が車に関する取引の承認プロセスに関与できるようになります。

この構想の面白い点は、車の「鍵」をNFTとして表現していることです。これにより、車の使用権をデジタルで簡単に管理できるようになります。 全ての操作権限を付与すれば車の運転が可能になる一方で、トランクの開閉権限だけを期間限定で付与するなど、柔軟な権限設定も可能です。 鍵のNFT化は、カーシェアリングとの相性が特に良さそうです。車の使用権をNFTで表現することで、シェアリングサービスにおける権限の受け渡しや利用状況の管理が、よりスムーズかつ透明に行えるようになると考えます。

さらに注目すべきは、トヨタという日本を代表する企業が、パブリックブロックチェーンやコントラクトウォレットといった最新技術を積極的に研究している点です。 既存の自動車産業とブロックチェーン技術を融合させた具体的なユースケースを提示していくことで、トヨタは自動車産業をソフトウェアの面でもリードしていくのだという気概を感じます。

coinpost.jp www.toyota-blockchain-lab.org

4. TONエコシステムとTelegramの急成長

TON(The Open Network)エコシステムが、ソーシャルゲーム分野で急速に拡大しています。 TONは、世界的に人気のメッセージングアプリTelegramの開発企業が開発したブロックチェーンです。 Telegramは、TONブロックチェーン上で動作する暗号資産ウォレットを内包しています。

TONプラットフォーム上のゲームの成長が著しく、NotcoinやHamster Kombatが数か月で数千万ユーザーを獲得しています。 この成長からは、「メッセンジャーアプリ + ウォレット + ゲーム」の融合が、暗号資産の普及の最適解だったのか、と思わせられるほどです。

今後、他のメッセンジャーアプリもこのモデルに追随する可能性が高く、ブロックチェーン技術と日常のコミュニケーションツールの融合が加速すると個人的には考えます。

www.neweconomy.jp

gam3s.gg

5. 日本発のモジュラーブロックチェーンの「Sunrise」のテストネットがローンチ

Sunriseという新しいブロックチェーンプロジェクトが、テストネットをローンチしました。 このプロジェクトは、Cosmosネットワークの開発・研究における日本人第一人者であり起業家の木村優氏が立ち上げたもので、Data Availability(DA)レイヤーとして設計されています。 DAレイヤーとは、ブロックチェーンのデータを効率的に保存し、必要な時にアクセスできるようにする仕組みのことです。

Sunriseの特徴は、Proof of Liquidity(PoL)というシステムを採用していることです。PoLは、ユーザーがトークンを預け入れることで、ブロックチェーンの安全性を高める仕組みです。 具体的には、「$vRISE」という譲渡できないトークンと、「$RISE」という譲渡可能なトークンが用いられています。 「$vRISE」はガバナンストークンとして機能します。 ユーザーはトークンを預け入れることで利回りを得ることができ、かつブロックチェーンのセキュリティに貢献することができます。

日本発のプロジェクトが、モジュラーブロックチェーンという新しい領域で存在感を出していくことには、誇らしいものがあります。 Sunriseが今後どのように発展していくのか、そしてブロックチェーン業界全体にどのような影響を与えるのか、とても楽しみです。

sunriselayer.io

今回取り上げたトピックは以上です! 次回もぜひご一読ください。

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